少しの工夫で賢く血糖値コントロール! 「食物繊維×セカンドミール効果」でゆらぎのない毎日を
20~30代の女性は「血糖値スパイク」という言葉にピンと来ない方が多いかもしれません。それって中高年の人が気にするもの?太ってないから大丈夫?・・・・・・いえいえ!血糖値の乱高下はどの世代にも起こるもの。食べたのにまだ食欲がある、食後がダルい、なんだかイライラするなどの心と体の不調。それって実は血糖値スパイクが原因かもしれません。そこで今回は、太陽化学の研究員 安部綾さん監修のもと、血糖値の急上昇を防ぐ「セカンドミール効果」について深掘りしてみました。
ー 心と体がゆらぐ「血糖値スパイク」
食事を摂ると血糖値が上り、再びゆっくりと下がっていくのが一般的なメカニズム。でも、炭水化物や甘いものを摂りすぎると血糖値がいつも以上に急上昇します。すると体はこれを下げようと慌ててインスリンを出すため、今度は逆に血糖値が急降下。これが「血糖値スパイク」です。血糖値の急激な変動は、食後の眠気やイライラ、集中力の低下などの不調を引き起こしたり、体に糖が溢れている状態が続くと、体の中で「糖化」が進んだりします。糖化とは、余分な糖とタンパク質が結びつくこと。その課程でAGEsという物質が発生し、それが肌のコラーゲンを破壊するなどの老化につながったり、血管を詰まらせるなどのさまざまな病気の引き金にもなるのです。また女性は特に、生理周期に伴うホルモン変化で血糖値コントロールに影響を受けるという説も。生理前に食欲が増えたり、甘いものが無性に食べたくなって食生活が乱れると、血糖値スパイクを起こして、もっとダルさやイライラを感じてしまうかもしれません!
ー 血糖値スパイクを起こしやすい人とは?
忙しい現代人には血糖値スパイクに陥りやすい落とし穴がいっぱい。一つでも当てはまるなら注意が必要です。
ー 1日3食タイミングよく食べる
血糖値スパイクを起こさず健康的な生活を送るために、まずは食事のタイミングについて注目してみましょう。
上の図は、食事を1日3食摂った場合に比べ、1食若しくは2食を抜いた場合の血糖値の比較です。食事を抜くと、食後血糖値のピークがより高くなることがわかります。
また、例えばいつも朝・昼・晩に食事をしていた人が朝を抜いて昼、夜、夜食に食事時刻をズラすと、体はその変化に対応できず、1日を通して血糖値が高い状態に。一方、普段 21:00に夕食を摂る人が、夕食の時刻だけを3時間早めると、食後の血糖値が普段よりも低くなり、寝ているときも血糖値が低い状態が続きます。さらにこの状態は、脂肪が酸化して分解が進み、脂肪をより燃焼しやすい状態になるのです。
つまり、血糖値の急激な乱高下を抑えて脂肪を効率よく燃やすには、朝・昼・晩と決まった時間に食べて、かつ夕食を早め済ませておくことが効果的です。
安部さんいわく、最近では24時間測定できる血糖値モニターがあるので、健康な人でも血糖値を測定して「まずは自分の状態をきちんと把握しておくこと」が大事だとのこと。自分の血糖値はいつ上がったり下がったりしているのか、何を食べたら血糖値が上がりやすいのか、さらにはどの順番で食べるとよいかなどを知って、生活習慣や食事習慣の改善に役立てましょう。
ー 「セカンドミール効果」とは?
ある程度の範囲内に血糖値を安定させておくことが理想ですが、だからと言って極端に糖質を抑えたり、おやつを控えるなどの食事制限をしなくても大丈夫。糖は摂りすぎると体に悪影響を及ぼしますが、人間の体にとってなくてはならないもの。そこで、食事をしっかり摂りながらも血糖値コントロールに役立つ「セカンドミール効果」に今、注目が集まっています。
「セカンドミール効果」とは、最初に摂る食事(ファーストミール)が、次の食事(セカンドミール)の血糖値を調節する作用のこと。つまり、朝食で食べたものが昼食時の血糖値の上昇に影響を与えたり、昼食やおやつに食べたものが夕食時の血糖値の上昇に影響を与えます。ファーストミールの食事内容によって血糖値の急上昇を起こさなければ、セカンドミール後の血糖値が安定するので、一食ごとの食事内容を意識することが大切です。では、どのような食事をしたらセカンドミール効果を発揮できるのでしょうか。
ー 積極的に食べたいのは「食物繊維」!
セカンドミール効果があるとされているもののひとつに、食物繊維があります。水溶性のリンゴ、キウイなどの果物、ゴボウ、ワカメなどの海藻類、またオクラやメカブなどネバネバとした食材も食物繊維が豊富です。体の中に早いスピードで食べ物が入ってくると血糖値が急激に上がりますが、食物繊維は腸の中の食べ物の移動を遅くするため、血糖値の急激な上昇を抑えます。また、食物繊維は消化管下部で分泌される消化管ホルモンの分泌を促し、腸の運動を抑制するため、次の食事の移動も遅くなります。さらに、この消化管ホルモンはインスリンを出して血糖値を下げたり、食欲を抑制させる効果も期待できます。つまり、ファーストミールで食物繊維を十分に摂っておくと、セカンドミールでの血糖値の急激な上昇を防いでくれるのです。
食物繊維はさまざまな病気の予防効果があるため、1日25g以上摂るのが理想とされていますが、(日本人女性の摂取目標量は18g以上/1日)、実際には14gほどと推定されています。つまり多くの人が食物繊維不足の状態であり、血糖値コントロールのためにも意識して食物繊維を摂ることが望ましいといえます。
ー 食物繊維の専門家・安部さんの食生活
今回話をお伺いした太陽化学㈱の研究員、安部さんは食物繊維の専門家。野菜と果物が大好きで、主食は玄米とあずきのご飯など、血糖値コントロールによい食事のお手本のよう。気になる安部さんの1日の食事内容は?
「朝、時間があるときは野菜たっぷりの和食を作りますが、さっと済ませるときは果物と食物繊維のサプリ入りドリンクを飲みます。お昼は会社で野菜たっぷりのランチを。おやつには血糖値を上げにくいナッツをよく食べます。夜も野菜メインの夕食を作って野菜をモリモリ食べていますよ。腸の健康のためにも白米よりも精製されていない玄米を選びますし、リンゴや桃などの果物は、食べられるものは皮ごと食べます。もともと野菜や果物が大好きなので、いろいろな品種を調べては気になるものをお取り寄せしています」
理想とされる食物繊維摂取量25gをらくらくクリアしているという安部さんの食生活。健康的な食生活は見習いたいものですが、たまにはケーキやクッキーだって食べたくなりますよね。安部さんいわく「食べたいものを我慢してストレスを溜めることも体や腸によくありません。私も甘いものが大好きでチョコレートをよく食べます。血糖値コントロールのためには、甘いものを食べたあとに軽い運動をしたり、例えばケーキを食べるなら、一緒に糖の吸収を阻害するポリフェノールを含むお茶やコーヒーを飲むなどの工夫を。酸にも血糖値の上昇抑制作用があるので、スイーツを食べる前に黒酢ドリンクを飲むのもオススメです。また、食べる順番も大事で、食物繊維を含む野菜や果物を先に食べることで糖や油の吸収が抑えられます。腸の壁に糖や油の吸収を阻止するバリアを張っておくイメージでしょうか」
野菜を中心としたバランスのよい食事を3食摂ることが基本ですが、こってり甘いおやつの誘惑に駆られたときは、「先に食物繊維を摂る!」ことを意識してみましょう。
ー 食物繊維が摂れるメニューで血糖値コントロール!
では最後に、味の素㈱の管理栄養士MASAKO研究員がオススメする、冬にうれしい食物繊維が摂れるあったかメニューをご紹介!何気なく摂ってる食事で血糖値スパイク起こしてしまわないよう、上手に血糖値コントロールするためのコツも聞いてみました。
「食物繊維は、肉や魚などの動物性食品にはほとんど含まれず、野菜や果物、大豆製品、きのこ類、海藻類などの植物性食品に多く含まれています。でも、朝食はトースト1枚とかランチは麺類や丼ものなど、手軽に食べられる単品メニューに偏ってしまいがちですよね。単品メニューでは糖質が多く食物繊維が不足しがちなため、朝食のトーストにサラダを追加したり、ランチでは単品よりバランスの取れた定食を選ぶのが理想的。単品メニューの場合は、サラダや切り干し大根、ひじきなどの海藻類を追加するのもオススメです。また、夕食が遅くなりそうな日は、間食で小腹を満たしておきましょう。空腹時間が長くなると、夕食時の早食いやどか食いにつながりますので、血糖値コントロールのためにも間食は悪ではありません。ヨーグルトに果物をトッピングしたものや、手軽に食べられるドライフルーツやナッツ、また食物繊維が豊富なことで知られるサツマイモなどもセカンドミール効果に役立ちます」
セカンドミール効果を高める間食&昼食メニュー
血糖値が上がりやすい夕食の前の食事、昼食や間食では特に食事内容を意識しましょう。食物繊維+栄養バランスも考えた美味しいメニューをご紹介しますので、ぜひ血糖値コントロールの参考に。
ピザ風厚揚げ
パンの代わりに厚揚げを使うことで普通のピザより糖質を抑えることができます。また、野菜やキノコをたっぷりトッピングすれば、腹持ちもよく食物繊維もバッチリ。おやつはもちろん朝食にもオススメ。
けんちん汁蕎麦
麺類なら、ラーメンやうどんよりも食物繊維豊富なお蕎麦をチョイス。ゴボウやこんにゃく、里芋などが入った温かいけんちん汁蕎麦なら、より栄養バランスも整います。寒い日のお昼ご飯にぜひ。