存在するものと、良い距離感を保つように自分を整えていく。【HERB ARE YOU?】が届ける一人ひとりの心地よさ
人それぞれ個性があるように、野菜にもそれぞれ自然に生まれる形や味わいがある。100種類以上のハーブティーブレンドを提供する「HERB ARE YOU?」を展開し、自然栽培による無農薬野菜を、新鮮なまま宅配で全国に届ける「VEGIMO(ベジモ)」を運営する小林寛利さんは、畑に行くことで自分の状態を整えていると言う。そんな小林さんがハーブティーのブランドを立ち上げた理由とは?人と自然の双方の心地よさに根ざした農業から見る、小林さんの想い。
ー 小林さんの生い立ちを教えてください。
農業が盛んな愛知県豊川市で、サラリーマン家庭のもとに生まれました。小学5年生から6年生の時に、両親の意向でニュージーランドへ短期留学しました。日本とは違う環境や教育、そして自然に対する視点での暮らしが原体験となり、大学卒業後は建物の壁や屋上に緑を増やす環境緑化の仕事に携わりました。有機農業との出会いは、25歳になって初めて新鮮な野菜のおいしさに気づいたこと。それまでは、毎朝ジャンクフードを食べるような生活をしていました。有機野菜のおいしさをきっかけに野菜作りを体験し、土に触れる気持ちよさを実感しました。
今はVEGIMOグループの事業を通じて、「人と環境にいいものやサービスが対価として価値になる仕事をして、世の中に残していきたい」という想いを体現しようとしています。
ー 小林さんが行う自然栽培とは、どのような農業なのでしょうか?
自然栽培とは、農薬や肥料に頼らずに農作物を育て、自然の多様性を大切に守りながら作物を育てる農業です。自然栽培の反対は、形が揃った農作物を大量に生産するために農薬や肥料を使う慣行農業。いま農業の中でもっとも一般的なのが、慣行農業です。
自然栽培では、微生物を駆除せずに、できるだけ自然に作物を育てます。さまざまな微生物たちが畑でいろんな栄養分をつくってくれるからおいしい野菜ができるのです。自然に野菜を育てていると、野菜の形を簡単には揃えられないことを実感します。人間も人それぞれ個性があり、まったく同じ人間は2人としていないですよね。形にばらつきがあるために販売が難しく、なかなか広まっていかない現状がありますが、有機農業や自然栽培には、人の健康や環境への影響、作り手の心地良さなどの別の価値がある。その価値を届けるべき人に届け、堂々と対価にしていくことを考えています。
ー 今回のLaboMe®︎で届けられた「HERB ARE YOU?」のハーブティーには、どのような想いが込められていますか?
わたしたちは、野菜や畑を通して健康を届けていきたいのですが、野菜も畑も毎日の健やかな生活を整えるものだと思っています。メディカルな部分には直結しないので、どうしても回復のために薬が必要なときがありますよね。
フランスではハーブを扱う薬局が町にあったり、ハーブを使った「植物療法」の資格が一般的になっていたりするようです。この話を聞いて、野菜以上・薬未満の中間の選択を増やしたい、と思いました。ゆくゆくは「HERB ARE YOU?」がナチュラルな薬局としての役割を担うブランドになったらいいな、と思います。
ー 有機農場の畑にハーブを植えると、野菜も元気になるそうですね。
ハーブには、「虫を避ける」「味をよくする」「生育をよくする」という大きく3つの効果が期待できます。ハーブだけではなく、野菜も組み合わせによってお互いの生育が良くなる「コンパニオンプランツ」という技術があり、効果も組み合わせによってさまざまです。
VEGIMOのファームもコンパニオンプランツを採用しているので、いろんなハーブがあります。今は「HERB ARE YOU?」のハーブは仕入れているものが多いですが、全国に畑が増えているので、いずれ自分たちのファームでつくられたハーブをお届けできるようにと考えています。
ー 「HERB ARE YOU?」は、100種類ものハーブティーが「INSPIRATION」「MAINTENANCE」「HEALING」3つの分類に分けられています。自分のペインに合わせて選びやすいのがポイントだと感じました。
何百人以上もの人の体調やライフスタイルを対面で聞き、一人ひとりに合ったハーブティーをブレンドしてきた植物療法士がこの分類を考案しました。市場にはさまざまなハーブティーのブランドがありますが、ブレンドの種類は多くても10種類ほど。人によって味の好みや生活リズムもあるので、僕は最低でも100種類は必要だと思うんです。植物療法士が10年以上の経験で積み上げてきたカルテを「HERB ARE YOU?」のレシピに生かしています。
「LaBoMe®︎」のテーマは、女性の不調に寄り添うことだと伺っています。「MAINTENANCE」のハーブから、自分の状態を受け入れて心地よく過ごすお手伝いができるハーブをピックアップしました。
ー 小林さんがお気に入りの飲み方や、好きなハーブティーの種類はありますか?
普段は、タンブラーにお湯で淹れたハーブティーを持ち歩いています。暑くなってくる夏場は、水出しがおすすめです。夜のうちにティーバックと水を入れて冷蔵庫で保管しておくと、次の日の朝、いい仕上がりになっています。朝起きて白湯を飲み、ランニングをするのが日課ですが、ランニング後の冷たいハーブティーは格別です。
水出しならローズマリー系、寝る前はカモミールをよく飲みます。あとは、食物繊維が多く含まれているものも好きです。食物繊維は乳酸菌(微生物)の餌になるんです。微生物を増やすのも大事ですが、微生物の餌を取り入れることも意識しています。
ー 都市部では、畑や自然が身近ではありません。小林さんは東京で過ごされていた時期もありますが、畑のある暮らしと、畑のない暮らしの違いは何だと感じていますか?
東京にいると、自然に触れる機会が明らかに少ないですよね。自然のように見えても、人工的に作られたものが多い。今の僕は畑に行くことを日課としていますが、畑って歩くだけでも気持ちがいいんです。何かうまくいかないことがある時や、気持ちを切り替えたい時も、畑で深呼吸をします。畑で夕日を見ていると、嫌なことも忘れて気分が晴れてきますね。
ー いろいろなお話を聞いて、小林さんが畑を通じてどのように野菜や人の個性を大事にしようとされているのかを感じることができた気がします。
存在するものを抑え込むのではなく、それを受け入れた上で、良い距離感を保つように自分を整えていく考え方が大事だと思います。VEGIMOでは、体調に不安のある方や、身体・精神・知的に障がいを持っている方を対象に、一般就労に向けたサポートも行なっています。世間ではみんなと同じペースではないために「障害」というカテゴリに当てはめられてしまいますが、「人とは違うから自分はダメだ」「あなたはできない」と、個性を押さえつけられて育つことで、本人も親も苦しんでしまいます。
農家も同じで、「こうやって育てなければならない」「形のいいものをきれいに作らなければならない」という規範に農家自身が縛られているように見えるんです。僕は、野菜の形が悪くてもいいと思っているんですよね。固定概念で責任を感じてしまったり、野菜作りが難しいと感じてしまうのは、すごく寂しいと思います。
本当に大切なのは、属性やその人を表す肩書きではなく、一人ひとりの個性であり、野菜をつくるときに生物を殺さないこと。当たり前なのに声を大にして言われてこなかったことを、VEGIMOのファームから伝えていきたいです。